「なんでですかね。まずほかに見る人間がいない(笑)。うーん、どうせなら見てもらった方が本人も嬉しいだろうし。仕事もあって忙しい日常の中でなんとか時間を作り、月謝を払ってジムに来る。彼らはボクシングが本当に好きで来てる人たちなんですよね。家族だったり周囲に反対される子って多いでしょ。うちの親も何やっても反対する方だったから。まあそういうのもあって、僕はそこまでしてボクシングをやりたいんだったら、せめてジムの中では好きなだけやらせてあげたいですね」

好きなことを思いきりやれる幸せ。それはどんな忙しい日々の中でも何物にも代え難い喜びなはずだ。しかしボクシングは辛く厳しいスポーツでもある。学業や仕事と両立させるのはそう簡単なことではないかもしれない。夜の練習生には文字通り「光」はまだ当たらないかもしれないが、ボクシングに対するその思いには感心すると言う。
「まだ高校生の男の子なんですけど、その子は銚子から来てて、週末だけジムに練習に来るんです。平日は学校終わった後にアルバイトして週末分の往復の交通費と月謝分を稼いでる。社会人にしても仕事の後にロードワークをしたり、まず朝からずっと仕事してから来るわけだから1日の睡眠時間は3、4時間だったりなんてザラ。まさしく『寝る間を惜しんで』ボクシングをやってるんですよ。そういう情熱や思いは大事にした方が絶対いいし、もし彼らが社会に出て立派な大人になった時に、若い連中にも好きなことを思い切りやらせてあげられると思うんですよ」
夢はこの「夜の部」からチャンピオンを作ること。「やっぱりトレーナーの喜びは選手が勝つことですから。まだベエルトは獲ってないんで」と言葉に力が入る。田島が仕込んだ夜のボクサーが1軍のリングでスポットライトを浴びてベルトを巻く日は必ず来るはずだ。 [取材・文:野口弘宜]

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