2024-08-17
16日、後楽園ホールのセミファイナルで行われた日本フライ級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの飯村樹輝弥(角海老宝石)が挑戦者4位の見村徹弥(千里馬神戸)に3-0判定(99—91、99—91、100—90)で3度目の防衛。初のタイトル挑戦に臨んだ見村を完璧に退けた。
V3に成功した飯村
打ってよし。守ってよし。王者・飯村がオールラウンドなボクシングを披露し続けた。立ち上がりからステップイン&アウトを巧みに操って、左ジャブ、フック、右クロスと多彩に攻める。重心が常に低い位置で安定し、体幹の強さも発揮。連打、コンビネーションを打ち続けながらバランスが崩れないため、打ち終わりを狙う見村の攻撃をステップでさらりとかわす安定感を見せた。
元来、相手をおびき寄せてカウンターするスタイルの見村だが、立ち上がりから飯村の攻撃ばかりでなく、多彩な動きを見入ってしまい、どうしてもリターンがワンテンポ、ツーテンポ遅れてしまう。それが後手を踏むことに直結し、飯村が意のままに攻防を繰り広げていく要因となった。
飯村の攻撃に慣れ始めた中盤以降、見村も左ジャブから前へ出て攻める姿勢を見せる。が、それもまた飯村の思うがまま、想定通りの展開だっただろう。飯村は、巧みな足さばきで前後左右にポジションを変え、見村の反撃をさらりとかわしていく。それは、見村のリズムを狂わすばかりでなく、自らのスタミナコントロールにもつなげていた。見村の攻撃体勢とその“気”をキャッチするセンサーも優れていた。“押し”と“引き”の絶妙さ、それが際立っていた。
終盤に入ると、飯村はかぶせるような右を再三再四ヒットさせた。左フックも上下にクリーンヒットし、流れるような左右連打もコネクトした。8回に左目尻をカットさせられた見村だが、しかし気持ちは落ちず、飯村の攻撃を受けても後退せずに、反撃態勢をゆるめなかった。初めてのチャンスに懸ける想いは伝わった。
バラエティに富む攻防でピカ一の安定感を見せた飯村は7勝3KO1敗。完璧にコントロールしたものの、ストップできなかったことを反省したが、これだけ柔軟性を持つのだから、いずれ“強さ”も加えられるだろう。敗れた見村は12勝3KO5敗。
◆バンタム級8回戦
西岡伶英(川崎新田)[76—75、76—75、75—76]内構拳斗(横浜光)
2回、左フックから右へつなごうとした内構(うちがまえ)に、西岡の右ショートがカウンター気味にヒット。たまらずヒザをキャンバスに着いた内構だったが、ダメージを感じさせず、臆することなく左からの攻撃を強めていく。しかし、結果的にこのダウンが勝敗を分けてしまった。
追いすぎず、距離を詰めすぎず、左を上下に散らしていくファイター型の内構。対するアウトボクサー西岡は、大きく動かず距離を取りすぎず、内構を誘い込むようにしてカウンターを狙う。肩の力を抜き、右オーバーハンドから左ボディーと対角をスムーズに攻めていく内構の攻勢が派手に映るが、西岡は内構の入り際に瞬間的に左ショートアッパーを狙い、連打の合間には必ず右ショートアッパーをリターン。切れ味と回転のシャープさをともなう西岡の攻撃は、内構にとってどうにも邪魔だったはずだ。
西岡のアッパーを警戒しつつ、間合いを詰めるタイミングに工夫を見せる内構は、右強打を見せパンチにし、左ボディーブローを決めにかかる。が、それを察知する西岡は、内構の右を徹底的に左ガードで止めて、内構の攻め手を左1本へと半減させていた。右の攻撃を思うように決められない内構は、ガード上を叩く右、返しの左フックに徐々に力みが目立ち始めていく。それがパターン化してしまい、西岡が読みやすくなってしまったようだ。
プレスを受けているように見え、ゆとりを持って内構に攻めさせていた西岡も、間隙に打つ左右アッパー、右ショートストレートを見せたものの、先に仕掛ける流れを作れず、はっきりとしたポイント奪取に結びつけられなかった。
西岡はこれが4戦目(4勝1KO)。日本ランク15位に入る内構も6戦目(4勝1KO2敗)。ともにアマチュア経験もあり、レベルの高い攻防を演じたが、まだまだプロキャリアをさらに積んで、持ち味を熟成していってもらいたい。
◆113ポンド契約8回戦
ジョアリ・モスケダ(メキシコ)[KO1回55秒]エルディン・ギナホン(フィリピン)
ハイガード、綺麗な左ジャブ、右ストレート。メキシコのスタンダードなボクサースタイルを継承するモスケダが、ファーストコンタクトで左、右アッパーのフェイントから左ボディーとつなぐと、ギナホンはたまらずヒザを着き、10カウントとなった。
モスケダは11勝8KO無敗。ギナホンは9勝8KO3敗。
◆S・フェザー級8回戦
齋藤麗王(帝拳)[KO2回57秒]ジョン・ローレンス・オルドニオ(フィリピン)
前戦で初黒星を喫した齋藤は、ジャブから力みなく右ストレートにつなぐ、ていねいに戦おうという意図の見える立ち上がり。初回から左右フックをボディーに叩きつけてきたオルドニオに2回、齋藤が逆に右アッパーからの左ボディーブローを突き刺すと、オルドニオは悶絶し、そのまま10カウントが数え上げられた。
齋藤は5勝5KO1敗。オルドニオは9勝5KO7敗1分。
◆64.5kg契約4回戦
楠 貴嗣(石神井スポーツ)[TKO2回1分21秒]ロックリー・ジェラム(ワールド日立)